騒がしいA組の教室。



だけど。



同じ空間にいるはずの私たちの空気は、やけに静まり返ってるようだった。



「…なんで、ここにいんの?」



水原くんが、少し声を掠れて言う。



八神萌ちゃん…八神さんは、水原くんを見て、優しく微笑んだ。



「唯香から、今日文化祭って聞いてたの。流矢にどうしても会いたくて…」



唯香って…木原さんだよね?



八神さんと木原さんは、友達なんだろうか。



「…俺に会いたいって、なんだよ」



水原くんは優しい表情をする八神さんを、睨みつけるように見る。



だけど、その瞳は、動揺してるかのように揺れていた。



「ずっと、後悔してた。流矢と会って、話したくて…」

「お前が会いたいのは、俺じゃないだろ?」



八神さんの表情が、少しだけ強張る。



「洸耶なら、隣のクラスにいるから。お前が会いたいのは、洸耶だろ?」

「ちがっ…」

「笹倉。コイツを洸耶のところに連れてってやって」



水原くんは、八神さんから私に視線を移す。



水原くん…平然を装っているつもりだと思うけど…



手が、凄く震えてるよ?



八神さんと…なにがあったの?



「流矢!私、洸耶じゃなくて…流矢に会いに来たの…」



八神さんが、水原くんの腕を掴む。



水原くんは、八神さんの細い手を振り払った。