毎度のことに、私も慣れてしまった。
「てか、なにこの混雑!入れないんだけど」
緋奈乃がA組の中を覗きながら、そう文句を言う。
「流矢を見たいっていう他校の女の子がたくさん来てるんだよ。流矢ちょー困ってる」
祐介くんはそう苦笑いすると、教室に響き渡るくらいの声で叫んだ。
「はいはーい!流矢は顔目当ての女大嫌いなんで、お取引きくださーい!」
祐介くんがそう叫んだ瞬間、女の子たちは目を点にした。
そして、早足にA組から出て行ってしまった。
…凄い。
水原くんに嫌われたくないからって、女の子はそれだけで出て行くんだ。
水原くんはため息をついたあと、髪の毛をくしゃっとして、私たちの所に来た。
「はあ。祐介、マジ助かった」
「俺から見たら羨ましいけどな?俺もあんな風に女の子に囲まれてぇー」
ケラケラ笑う祐介くんの頭を、水原くんは思い切り叩く。
祐介くんは“いてっ!”と叫んで頭を触る。
水原くんは祐介くんを呆れた目で見ると、私に視線を移した。
その瞳は、なんだか怒ってるみたいで…怒ってる?
「…お前さぁ」
やっぱりその声はいつもより低い。
えっとー…私、何かした⁉︎
