水原くん。



そんなこと、言わないでよ。



そんな、期待させるようなこと…言わないでよ。



水原くんは、八神萌ちゃんという、ひとりの女の子が好きなんでしょ?



そんな言葉…他の女の子に、言っちゃダメだよ。



「祐介。もう戻んないとヤバイ」



水原くんは緋奈乃とまだ言い合っている祐介くんに、そう声をかける。



祐介くんはダルそうに返事を返す。



「えー。俺、もう自由になりたい」

「そんなんだと、午後ナンパできないけど?」

「やっべー行かなきゃ!女の子が俺を待ってる!」



祐介くんはいきなりやる気になる。



どれだけナンパしたいのよ。



最後は祐介くんが水原くんを引っ張る形で、ふたりはB組の教室から出て行った。



「あーっ、祐介ってなんであんな女好きかなぁ」



緋奈乃はため息をつく。



でも、本当だよね。



女にしっかりしてれば。



もう少し一途なら。



もっといい男になると思うんだけど。



「じゃあ、うちらもあともう少し頑張ろう!」



緋奈乃は私の腕を引っ張る。



緋奈乃の後ろ姿は、やる気で満ち溢れていた。