「お前なぁ…俺は嫌なんだよ。笑うな」
そう言って、私の額にデコピンする。
痛い。
そう思うより先に。
水原くんの指が触れた額が、熱いと思った。
「水原くんはなにしてるの?」
「俺も今休憩。午前担当だから、午後は祐介のナンパに付き合う予定」
「俺はしないけど」と、水原くんはははっと笑う。
祐介くん…文化祭でもナンパするんだ。
さすが祐介くんとしか、もう言いようがない。
「笹倉は?午後誰かと回るの?」
誰か…
「うん…」
蒼くんと回る。
でも、水原くんには言いたくない。
男の子と回るって…なんでだろう。
言いたくなかった。
「ふーん。誰?」
でも、水原くんは私の心境になんかお構いなしに聞いてくる。
「…他校の男の子。友達だけどね」
私がそう言うと、水原くんの表情が、ムッとなった。
そして、椅子から立ち上がった。
「…なんか、嫌だな」
水原くんは、本当に小さい声でそう呟いた。
本人は独り言のように呟いたのかもしれないけど…
私には、しっかり聞こえたよ。
その言葉しか聞こえなかったくらい、クリアに。
