「俺は…もう、好きじゃない」



洸耶がそう言った瞬間、水原くんは洸耶の胸ぐらを掴んだ。



「嘘言うんじゃねぇよ!いつまでそうやって…自分の気持ち押し込んでんだよ!」

「……」

「萌のこと好きなんだろ?好きなら好きって言えよ!」



洸耶も…八神萌ちゃんのことが、好きだったの?


水原くんは洸耶の胸ぐらを掴んだまま続ける。



「…これ以上、萌が傷つくところ、見たくないんだよ…」



水原くんのその言葉を聞いて分かった。



水原くんは…本当に、八神萌ちゃんのことが、好きなんだって。



「…好きじゃない。だから、流矢も俺に遠慮しないで、萌と付き合え」

「はっ…なんだよそれ。善人ぶりか?」



水原くんは力なく笑うと、洸耶から手を離した。



すると、洸耶は水原くんを、キッと睨みつけた。



「じゃあ、俺も聞くけど…お前、なんで野球やめた?」



シーン…と、悲しいくらい静まり返る空き教室。



洸耶はそんなことも気にせずに、続けて話す。



「お前が野球やめた理由って…萌が関係してんの?」

「…やめたくなったからやめた。それだけ」

「それが本心か?祐介だっていつも言ってんだ。もったいないって。野球上手かったのにって!」

「いいんだよ!俺は、もう…野球は捨てた」



私はこれ以上聞いていられなくて、その場から走って立ち去った。



もう、頭の中がこんがらがっている。



ねぇ。



水原くんと八神萌ちゃん。

洸耶と八神萌ちゃん。

水原くんと洸耶。



みんなの関係って…なんなの?