水原くんは、八神萌ちゃんが好き。
もう、確信するしかなかった。
「本気で好きなヤツを、洸耶が傷つけたんだよ!許せるはずねぇだろ!」
「洸耶だって、後悔してんだよ!流矢。それくらい、分かってやれよ!」
さっきまで、お互いの顔を書きあって笑い合っていたふたりが。
こんなになるまで怒鳴り合うなんて…
八神萌ちゃんの話だけで、なんでここまで…
「…流矢。お前、今はどっちが好きなんだよ?」
祐介くんは少し落ち着きを取り戻し、静かな声で水原くんを見る。
「どっちって、なんだよ」
「とぼけんな。萌か真湖ちゃん。今はどっちが好きなんだよ?」
いきなり私の名前が出たもんだから、肩が跳ねた。
なに、その質問…
そんなこと聞いたって、水原くんの答えは決まってるでしょ…?
「なんで笹倉が出てくるんだよ」
さっきは八神萌ちゃんの名前を優しく呼んでいたのに。
私の名字を呼ぶ時は、いつもの声色だった。
こんなにも、違かったんだ。
私と、八神萌ちゃんの存在は。
「いいから答えろよ。どうなんだよ?」
「…笹倉のことは好きじゃない。友達としか見てない」
…ほら。
水原くんは、私のことを友達としか見ていない。
そんなこと、最初から分かってた。
でも。
いざ目の前で本人に言われると。
心が締め付けられるように、苦しくて…
凄く、悲しくなるんだ。
「笹倉は、俺とは違って心が真っ直ぐなヤツだよ。俺には眩しすぎるくらい…本当に良いヤツなんだ。そんな笹倉を、俺が好きになる資格なんてないよ」
「もしかして…真湖ちゃんのこと好きなのに、その恋心を隠してるってことか?」
「違う。本当に笹倉のことは好きじゃない。でも、もしこの先俺が笹倉のことを好きになったとしても、俺は笹倉に想いを伝えることはないと思う」
