「萌、言ってたぞ。お前に謝りたいって。あんなことするはずなかったって」



謝りたい。

あんなことするはずなかった。



ふたりが何の話をしているのか、私には分からない。



だけど、水原くんと八神萌ちゃんの間には。



何かがあったんだと、分かってしまった。



「…洸耶とも、ちゃんと話し合えよ」



祐介くんが、落ち着いた口調でそう言った。



水原くんの肩が、少しだけ震えた気がする。



えっ…なんで、洸耶?



なんでここで、洸耶が出て来るの?



「洸耶は流矢になんか怒ってねぇから。自分のあの時の行動に、後悔してるだけだって、言ってる。だから、流矢も洸耶にいつまでも怒ってないで…」

「怒ってなんかない」



水原くんは、やっと言葉を発した。



でも、いつもよりも重そうに、低い声で。



「じゃあなんで…洸耶と向き合わないんだよ!」



いつもヘラヘラおちゃらけて笑っている祐介くんが、凄い怒鳴り声を水原くんに向けるから、私も驚いてしまう。



でも、水原くんの背中は、何も変わらなかった。



「洸耶は今だって、お前と向き合いたいって前に進んでんだぞ!それなのにっ…お前はいつまで逃げてんだよ!」

「仕方ないだろ!俺はあの時…本気で萌が好きだったんだよ!」



ーー『本気で萌が好きだったんだよ!』



なんで…なんで?



なんで、視界がボヤけてるの?



私…これくらいで、泣くような女だった?