「見ろよ。あの飼育員の目。」
カノは目を凝らして飼育員をみた。
「なんだ、何も…。あ!!」
「それに、腕。アレ隠してる。」
彼女の腕にはリストバンド。手首を綺麗に隠している。
僕らもばれないようにそっと左手を背中に隠す。
僕は包帯、カノは腕時計とブレスレット。
あたりを見回すとイスにもたれている仲間アイを見つけた。
「ラス…仲間さんが。」
「うん…。」
女はなにをしに来たんだろうか。
僕らを狙ってるんだろうか。
狙われる機会だって少なくは無い。
でも、なんでユウヒを狙う。
そう思うと汗が吹き出す。
僕の…僕のせいでユウヒや仲間さんが…。
「お前ら…!ワタシと同じ目!!」
いきなり大きな声がした。
あの飼育員だ。
同じって…!バレた?!
瞳はちゃんと茶色になっているはずなのに…。
「しょうがない。カノ、行こう。」
カノは言う。
でも、でも…それでユウヒが死んじゃったりしたらどうするんだ。
僕は怖くて動けなかった。
けどカノはいつものような笑った顔ではなく、とても真剣で目が鋭かった。
こんな顔のカノは初めて見た。
「…な!お前の権力でどうにかならないか。」
僕が小さな声で言うとカノは頷いた。
カノはブレスレットと時計を外しはじめた。
「動くな!」
女が叫ぶ。
女のナイフの刃先がユウヒの首スレスレにもって行かれる。
…やめろ!!
僕は声に出したいのに出せなかった。
しかし、カノは手を動かすことをやめない。
まるで女がユウヒを殺さないことをわかっているような。
「…動くなっていってるでしょう!!」
また女が叫んだ。
カノを見るとカノの手首があらわになっていた。

