マーブル



✴︎ユメside

「…じゃあな。」
「…うん。ありがとう。」
私は彼を病院の前で見送った。
私に背を向ける瞬間、彼の紅い瞳が光る。
やっぱり綺麗な目。
彼は私の元から離れて行った。
彼は多分消える。
私は夢を見ているのかもしれないな。
彼の紅い瞳や黒い髪の毛が全部この世とは思えない不思議な感じがして。
多分彼は、
消えちゃうんだ。
そんなはずは無いのに。
そんな気がして。
私は月を手で仰いだ。
あ。
コート…。
…忘れてた。
私は慌ててコートを脱いで彼の行った方をみた。
もう彼は見えなかった。
消えちゃう彼が最後に残したもの。
そんな気がして私はコートを綺麗に畳んだ。
牢獄に戻らなきゃ。
私の自由を無くす牢獄。
そんな私に一筋の光がさしたと思ったのに。
もう消えちゃうなんて。
彼の行った方をみながら
私は腫れて、赤くなった自分の手を見つめた。