「ほら早く押して。」
私が言うと、はいはい。と言って彼は車椅子に手をかけた。
「何処に行くの?」
彼は私の顔を覗くように言う。
私は告げた。
「遠い所。」
「えっ。」
彼は変な声を上げた。
「病院よ。遠いの。」
「なんだ。病院か。」
彼はホッとしたような声を出す。
本当は病院なんかに帰りたくないけど。
初めて会った人…ヒノカノを困らせる訳にはいかない。
病院を案内しながら商店街を進んだ。