隣のクラスの転校生【完】



恋なんてしたことなかったのに、する予定も無かったのに。…したくもなかった。

なのに、

「市村さん。」

よりによって桐生渉なんか。

「っ、」

バス停に向かう一本道。

桐生渉に似た声の持ち主から名前を呼ばれ、振り返ると案の定桐生渉本人だった。

私は目を見開いた。そしてすぐに足を前に出し、全速力で逃げた。なのに、なのに、桐生渉は私を追いかけてくる。

あぁもう。帰宅部で運動神経もない私だから足が全然進まない。その間にもう桐生渉は私の真後ろまで来ていて。


「市っ、村さ…ん。なんで逃げるの…?」

と、痛いくらいに強く腕を握られる。そんな行動に泣きそうになる。目の前には『はぁはぁ』と息を上げる桐生渉。状況がわからなくて、混乱しかない。