「あ、…そっ、か。それなら最初に言ってくれればよかったのに。なんかごめん。」
その桐生渉の言葉に私は何も言わなかった。いや、言えなかった。
あまりにも悲しそうな顔をするから。
なんだか胸のそこがぎゅうと握られた気がした。なんだこの嫌悪感。私が悪いのか?なんだこの胸騒ぎ。
だんだん暗くなっていく桐生渉の表情。
だからといって前言撤回出来るほど私は素直で可愛くもない。そんなことを考えているうちにバスが来て、私たちは別々の席にすわった。
ああ、もう何。
なんでそんな顔するの。本当に桐生渉の心理が読めない。ただの隣のクラスの転校生じゃん。なんで。



