そして、最後に登場したのは……奇跡の力を施される人間だった。
“カグヤ憑き”の力が振るわれるということは、病を癒される人間がいるということに等しい。あどけない顔立ちの少年だった。まだ、小学生だろうか。空色のパジャマを着ていてピクリとも動かない。
男性の使用人2人に担架で運ばれてきた少年から、女性が辛そうに目を背けた。
少年は死んでいるのか生きているのか区別がつかないほど、青白い顔色をしていた。素人の私にも一目で病んでいるということがわかる。
少年は祭壇の前に用意されていた布団に丁寧に寝かされた。
「これから起こることは他言無用でお願いします」
志信くんは儀式に立ち会う3人に言った。そして、ちらりと私の隠れている衝立にも視線を送ってきた。大人しくしていろということだ。
「お願いします!!息子を助けて下さい!!」
たまりかねた様子で女性は泣きながら訴えた。
……この人は少年の母親だったのだ。



