準備が整うと“月天の儀”を今か今かと待ちわびていた関係者達が、橘川家の使用人に付き添われ次々と連れてこられた。
最初にやって来たのは、30代ぐらいの男女だった。ハンカチで涙を拭いている女性に寄り添うように男性が肩を抱いていた。夫婦だと分かったのは、会話の内容を聞いてしまったせいだ。
「あなた……。本当に大丈夫なのかしら……」
「大丈夫だ。あの子はきっと治る」
次にやって来たのは上等なスーツを着た恰幅の良い中年男性だった。こちらはひとりだ。夫婦の隣に用意された座布団に重そうな身体を載せると、尊大に言う。
「ふん。“カグヤ憑き”の力とやらを見せてもらおうじゃないか」
“カグヤ憑き”の存在をかなり訝しく思っているのが態度に出ていて感じが悪い。
やれるものならやってみろと言わんばかりに腕を組む。



