「波多野くんは本当に子供ね。桜木さんに構って欲しいのよ」
「遠慮したいところです。こっちだって忙しいのに」
ただでさえ1月は年明けでバタバタしていて忙しいのに、波多野くんに構っている暇などない。
邪魔な髪をシュシュで左耳の後ろでひとつに括ると、処理するべき書類を見ながら一心不乱にキーボードを叩く。
私の勤める“株式会社アートメイク”は企業のホームページを専門に扱うWEBデザイン会社だ。
クライアントの予算やニーズに合わせたホームページを企画・制作するのが私達の喜びであり使命である。
デザイナーとプログラマーはクライアントに満足して頂けるホームページを目指し、今日も大忙し……波多野くんもその一人のはずだ。
ひとのことをからかう暇があるなんて、さぞ余裕がおありのご様子で。
いつも納期間際に投入される栄養ドリンクは冷蔵庫から撤去させて頂きましょうかね。
ふふふと不敵な笑みを浮かべて、波多野くんの横顔を盗み見る。
彼の口から飛び出す悲痛な叫び声が想像できて、少し笑ってしまった。



