「今日は早かったんだね」
「ああ」
志信くんとまともに会話するのは久しぶりだった。
ここ数日は、夜遅くに寝床に潜り込み、私より先に起き出していたからだ。
仄かに漂う残り香と、この身に残る志信くんの温もりが、束の間の来訪を教えてくれていた。
豊姫の言った通り、満月が近づくにつれて志信くんだけではなく、本宅も慌ただしい気配に包まれてくるようになった。
この離れだけが切り離されたように変わらず静けさを保っている。
ふたりの間に流れた沈黙を先に破ったのは私だった。
「あの……壺のお金のことなんだけど、分割でお願いできないかな……」
出来れば1000回払いぐらいでお願いできると嬉しい。
……払い終わる頃には生きているか怪しいけれど。



