“小夜―。何してるの?”
マウスをカチカチと動かす音だけが響いていた室内に、豊姫の呑気な声が届く。
「ごめんね。今、忙しいの」
手を合わせて申し訳なさそうに言うと、豊姫はこれでもかというくらい膨れっ面になって拗ね始めた。
“つまんなーい!!”
「ごめんね。今度、豊姫の好きそうな甘い物でも買ってくるから」
宥めるように言っても、豊姫の機嫌は直らなかった。文机と対角線上にある壁際に陣取ると、体育座りで私への嫌味を繰り返す。
“小夜のバカ。もう嫌い!!”
平安時代のお姫様って、みんな我儘なんだろうか。
どんなに拗ねようが、相手をしている暇はない。豊姫の愚痴を容赦なく無視して、パソコンに向かい続ける。
何度か検索条件と職種を入力し直すと、やっと私の希望する条件の仕事が出てきた。こうなったら片端から連絡して面接を受けるしかない。上手くキャリアアップできれば、御の字だ。
あとは申し込みボタンをクリックするだけだった。



