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「だから、これは経費で落とせません」
「ええー!!良いじゃん。桜木のケチんぼ」
口をとがらせて可愛く言っても無駄だ。
毎度毎度同じ手を使いおって、少しは学習しないのかこの男は。
「はい、却下」
顔にぺちんと領収書を張り付けて突き返す。
“僕ちんのエネルギー源”なんてふざけた使用目的で、申請が通ると思っているのが不思議でたまらない。
プンスカと腹を立てながら自分のデスクに戻ると、隣のデスクの都築さんがクスクスと笑みを漏らした。
「また懲りずに波多野くんてば、栄養ドリンクの領収書を出してきたの?」
「本当に困った人ですよ、波多野くんは。同期なのが嫌になります」
私より10歳年上の都築さんはこの会社の経理主任だ。二人の子供を育てながら、意欲的に働く姿は同じ女性として本当に尊敬してしまう。
都築さんは入社したてで右も左もわからない私に仕事を叩きこんでくれた恩人でもあり、良き相談相手でもある。
……最近の主な相談内容は波多野くんのアホさ加減についてだけれど。



