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(何だったんだろう……)
押し入れにしまってあった布団を畳に敷くと、行儀悪くダイブする。
あの騒動のせいで理由をつけてその場に留まろうとする志信くんを説得して、湯船に浸るまで20分もかかってしまった。
(あんなことくらいで驚いちゃだめよね)
気を引き締めるように、顔を両手でパシンと叩く。
橘川家が生きる伝説が服着て歩いている家なのだから、何が起こったって不思議ではない。
まあ、自分も生きる伝説の一員ではあるのだけれど。
いまいち現実味に欠けるのは、私には志信くんと違って特別な力を持たないせいだろう。
(五千万の作り方、考えないとな……)
電気スタンドのスイッチを落とすと、布団に潜り込む。
もしも、力が持てるなら今すぐ五千万が作れる力が欲しい。
浅はかだが凡人の想像力なんて所詮、そんなものだ。



