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定時ピッタリに迎えに来た車に乗って帰宅すると、既に志信くんが部屋で待っていた。
「遅い」
不機嫌そうに言われても、こちらだって困る。
「道路が渋滞で混んでいたのよ」
道路交通事情まで責任持てるわけないだろう。神か、私は。
バッグを置いてスプリングコートを脱いでいると、志信くんに背後から抱き寄せられる。
「逃げたのかと思った」
「に、逃げるわけないでしょう。壺割っちゃったのは私だし……」
ドギマギしながら答えて、志信くんの腕から逃れる。
そのまま廊下に向かって歩きだすと、どうしてか志信くんが後ろをついてきた。



