「なんだよ、桜木。それっぽっちで足りるのか?」
通りがかりの波多野くんが食べかけのサンドイッチと野菜ジュースを見て、茶々を入れてくる。
「食欲ないの」
「なに言ってんだよ。いつも美味そうに食後の菓子まで食べてんじゃねーかよ」
デリカシーの欠片もない波多野くんをジロリと睨む。
「いいよね。波多野くんは悩みがなさそうで」
大盛りカップ麺を豪快に完食して直ぐに、おやつにシュークリームまで食べられるなんて、食欲不振とは無縁だろう。正直、波多野くんが羨ましい。
私など考えることが多すぎて、胃が痛いというのに。
目下の悩みはどうやって五千万もの大金を稼ぐかということだ。



