今宵も、月と踊る


「俺と結婚でもすれば良いだろう。そうしたら壺は共有財産だから、割ろうが売ろうがあんたの好きにしていい」

半ば本気の台詞に頬が紅潮した。

“あんたは俺の物だ”

……勘違いしてはいけない。

志信くんは“カグヤ憑き”として“カグヤ”を求めているに過ぎないのだから。

「志信くんっていくつなの?」

「20歳」

「学生?」

「そうだ。悪いか」

「結婚なんて言葉、軽々しく口にしちゃダメよ。まだ若いんだし」

もごもごと口ごもってしまうのは、私が結婚を意識する年齢のせいだ。

「そうだな。言うのはあんたの前だけにしておく」

志信くんはからかうように言うと、私の頬にキスを贈った。

「おやすみ」

ひとり部屋に取り残されると、途端に疲れがどっとでて布団に顔を埋めた。

(早まったかもしれない……)

……結局、行き帰りの送迎を条件に出社は許されたのだった。