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「珍しいね。桜木さんがコンビニ飯なんて。いつもの手作り弁当はどうしたの?」
「昨日、忙しくて……」
私は都築さんの問いを誤魔化すように笑うと、階下のコンビニで買ったサンドイッチを口に運んだ。
ベーコン、レタス、トマト。食べ慣れた味に少しだけホッと安心する。
こうして会社にいて昼食を取っていると、週末の出来事は夢だったのではないかと思えてくる。
……志信くんの申し出を承諾すると彼は直ぐに動いた。
一緒に私の部屋まで車で出かけると、必要な物を取ってくるようにと促された。
しばらく家には帰れないかもしれない。
そう覚悟して、スーツケースの中に洋服や日用品を詰め込んだ。
ぎゅうぎゅう詰めのスーツケースとともに離れに戻ると、今度はバッグと洋服を返された。
「出掛ける時は俺の許可を取れ」
「仕事は?」
「行くな」
「バカなこと言わないで。働かないでどうやって五千万もの大金を稼ぐのよ」
これだからお坊ちゃまは困る。働かなくても湯水のようにお金を使えるのは、ごく限られた一部の富裕層だけだ。
僻みも織り交ぜて反論すると、志信くんは事もなげに言った。



