「夕膳をお持ちいたしました」
運ばれてきたお膳にのっていたのは、料亭で出されるような綺麗な料理だった。
……いや、料亭など行ったこともないから本当は比較できないけれど。
味はもちろん色合いや調理方法も工夫が凝らしてあって、見るも鮮やかだった。
多分、美味しいのだろうけれど味なんて全然しない。
それもこれもこのへんてこな状況のせいだ。
ぼんやりと茶碗の米粒を数えていると、志信くんが椀を置いておもむろに口を開いた。
「橘川家には特別な力を持った“カグヤ憑き”と呼ばれる男児が生まれることがある。
“カグヤ憑き”には対となる存在がいる。それが“カグヤ”だ」
……そして、志信くんは橘川家に伝わる伝説を語り出した。



