「私はあなたの物になんてならない」
乱れた浴衣を引き寄せながら宣言すると、志信くんの顔が切なく歪んだ。
見ているこちらの方が苦しくなってしまいそうな表情に、思わず目を逸らす。
(どうして、そんな顔をするの……?)
……何もかも分からないことだらけだった。“カグヤ”のことも、志信くんのことも。
「それでも、俺はあんたを手放さない」
志信くんは次の瞬間、私の身体をぎゅっと力強く抱き締めた。
(ねえ?“カグヤ”って一体、何なの?)
聞きたいことは山ほどあるのに、この温もりの前ではどうでも良くなってしまう。
私はただ、小さい子供のように縋る彼の気が済むまで大人しくしているのだった。



