今宵も、月と踊る


「なんだ、起きていたのか」

布団の傍らにドカリと腰を下ろし胡坐をかく姿は、なんてふてぶてしいのだろう。

「ここはどこなの?」

「俺の家にある離れだ」

離れ?離れがある家なんて聞いたこともない。とんでもないことに巻き込まれてしまった感が否めない。

「あの……。橘川さん」

「志信で良い」

「じゃあ、志信くん。私の荷物はどこにあるの?」

「俺が預かっている」

「返してもらえるかな?」

「ダメだ」

「あのねえ……」

私は頭を抱えたくなった。

最近の若い子は人の話を聞かないのが標準なのか?志信くんが特殊なだけ?

自分のことはおばさんとは思いたくないけれど、会話が全く通じないことにイライラしそうになる。

これがいわゆる“じぇねれーしょんぎゃっぷ“というやつか。