今宵も、月と踊る


「無駄だ。大人しくしろ」

「大人しくしているはずないでしょう!?」

閉じ込められてしまったことに動揺して声を荒げると、グラリと頭が傾いだ。

倒れたばかりだというのに興奮したせいだろう。

「寝ていろ」

身体を引き寄せられて、無理やり膝の上に寝かされる。

(……悔しい)

人さらいのくせに頭を撫でる手が優しいから、許してしまいそうになる。

考えてみれば男の人に頭を撫でられるなんて久し振りのことだ。

志信と名乗った彼の横柄な態度を不快に感じているのに、他人を従わせるカリスマ性のようなものがあって不思議と逆らえない。

私は気が付くと自分の現状など放り出して、すっかり寝入ってしまったのだった。