お世話になった宮司さんにお礼を言うと、車を待たせているという彼の言葉に従って神社の駐車場に向かう。
駐車場にはどう見ても上等な黒塗りの車が待っていた。
まさかこの車に乗れとでも言うのか。
恐る恐る隣に立つ彼の顔色を窺うと、運転手らしき人にドアを開けられた。
もしかして、それなりに良いお家のお坊ちゃま?
「乗れ」
有無を言わさぬ物言いに眉をしかめる。
介抱してもらったうえに送ってもらえるなんて文句を言える立場にないのは重々承知しているが、ここまで事を強引に進められると怖くなってくる。
「あの……。ひとりで帰れます」
「いいから乗れよ。また倒れたらどうするつもりだ」
彼はとっさに逃げようとした私の腕を引くと、後部座席に押し込んでドアを閉めてしまった。



