「頑張ってね」
「あなたに言われるとまるで嫌味みたいね」
憎まれ口は緊張の裏返しだ。それを学んだのはつい最近のこと。
大事な大会の前で萎縮していないはずがない。励ましの言葉を素直に受け取れる人もいれば、そうでない人もいる。貴子は後者だった。
「あら、本心で言っているのよ?」
ここぞとばかりに脇腹を肘で突く。
励まされると憎まれ口を叩くくせに、自分への声援が少ないと露骨にへこむのだ。
(可愛いやつなんだから……!!)
ウシシと歯を出して笑うと、貴子の肩に腕を回す。
「本当は私に応援して欲しいんでしょう?」
からかわれていることに気付いたのか、パシンと露骨に腕が振り払われる。
「帰ってくるついでに小夜に夫を紹介しようと思って寄ったのよ」
「夫……?」
貴子が帰郷に旦那様を一緒に連れてきたのは、私がこの地に暮らしてからは初めてのことだった。



