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「ごめんください」
「ああ、小夜さん。いらっしゃい」
百合子さんは私の顔を見ると、商品を出す手を休めて軽く会釈をしてくれた。
結婚式の翌週。私は再び三好屋の門を叩いた。
「借りていた着物を返しに来ました。すみません。すっかり遅くなってしまって」
本当は借りた時と同じように郵送してしまえば良かったのだけれど、友人代表として鈴花に結婚祝いを持っていくという使命を仰せつかったこともあって直接返しにやって来たのだ。
百合子さんは私を応接セットに案内すると、温かいお茶とお茶請けのお饅頭を出してくれた。
「はい、確かにお返し頂きました」
借りていた着物の点検を済ました百合子さんが眼鏡を外す。



