今宵も、月と踊る


長い夜が明けると、大祭の打ち合わせをするために出掛けなければならないのに、いつまでも床に伏している志信くんを急かして支度をさせる。

追い立てられているというのに、志信くんは鼻歌まで歌いだしかねないほどの上機嫌だった。

「早く終わらせてくる」

掠れた声が昨夜の情事を思い出させて気恥ずかしい。

志信くんは頬を両手で包むと、慎ましいとは言い難い熱い口づけをくれた。

「続きはあとでな」

(志信くんのスケベ……)

どうしようもない人だと拗ねて顔を膨らませる。

こちらはまだ昨日の熱が冷めやらぬ状態だというのに、再びベッドに引きずりこまれるなんてとんでもない。

……全身を隈なく愛撫されて、壊れるかと思った。

若いってすごいとオバさんのような感想が頭に浮かぶ。

「いってくる」

そう言って片手を上げて出掛けていく後ろ姿を目に焼き付ける。

「いってらっしゃい」

志信くんを見送るのも今日で最後になる。