「早く……」
脱がしてと、両腕を志信くんの首に回して強請る。
あれほど時間をかけて用意したのに、一刻も早く邪魔な布を剥ぎ取って欲しかった。
直に触れ合ってその鼓動を、温もりを確かめたい。
「くそっ!!これ以上惑わせてどうする気だ……」
悪態をついた志信くんはベッドの上で膝立ちになって己の着ていたカットソーを脱ぎ捨てると、今度こそ互いの纏うものを一切取り払ってしまった。
彼に抱かれるその意味を思い出しながら、何度も何度も心の中で繰り返す。
(愛している……)
誰が何と言おうと、私はあなたを愛している。
だから今宵は、あなたの代わりに。
私が月と踊ってみせる。
零れ落ちそうな涙を堪えるように、志信くんにしがみつく。
混じり合う体温を切なく思うのは別れが迫っていることを知っているから。
ふたりで過ごす長い夜が今、始まろうとしている。



