穢れのない乙女というわけでもないのに、ドキドキしすぎて心臓が口から飛び出しそうだった。
経験のある年上の女を演じて志信くんを誘惑してみたわけだか、無駄な努力だったということか。
「どうなっても……知らないからな……」
初めて足を踏み入れた本宅の志信くんの部屋は洋風のしつらえになっていて、離れとはまた趣が異なっている。
トンと背中を押されローベッドに寝かされると唇を啄まれながら、帯がゆるゆると解かれていく。
どこもかしこも志信くんの匂いがして、息を吸うたびに身体が熱くなった。
喉元を這う舌に敏感なところを刺激されて、鼻につく乱れた声が余計に志信くんの興奮を煽る。
「小夜……」
潤んだ瞳で見つめられると、女として自尊心が歓喜に打ち震える。
(綺麗な人……)
意地悪な唇も、細くて長い指も、鍛えられた両の腕も、今は私だけの物……。
これほど美しい男性に狂おしいほどに求められていると思うと居ても立っても居られなくなった。



