“成典様は先に逝った私のことを恨んでらっしゃるのだわ。死してなお、輪廻転生の輪に加わらず、こうして現世に留まり続けていられるのはその証ね。
天に昇ってまで私の顔など見たくないのだわ”
「そんなことない……っ!!」
恨みをつのらせて豊姫を拒んでいるのだとしたら私は絶対に成典を許さない。
豊姫は千年以上もたったひとりで“カグヤ”と“カグヤ憑き”を見守り続けていたのに……。
“慰めてくれなくて構わないのよ。分かっているの。約束を先に破ったのは私なのだから”
豊姫は私の頬にかかる髪を払おうとしたが、触れられないことを思い出すと寂しそうに手を引っ込めた。
“今夜……なのね?”
私は左胸に咲く橘の花をジャージの上から握りしめた。
「うん」
準備は全て整っていた。
……“カグヤ憑き”に橘を返す時がやって来たのだ。
“あなたの健闘を祈っているわ”
豊姫は私の掌の上に自分のものを重ねて言った。



