今宵も、月と踊る


“そんなに心配そうな顔しなくていいのよ?”

豊姫は私の不安を見抜いていた。

“確かに、成典様から頂いた梅の枝は枯れることなくひと月も花を咲かせたままだった。苦手な蛙を白色の蝶々に変えて見せてくれたこともあったし、ひとさし舞えば天気は思いのままだった。
でも、成典様は力を悪用しようなんて、これっぽっちも思っていなかったのよ”

豊姫の話にある青年からは、伝説と同じ強欲さは感じられない。

だからこそ、ふたりの過ごした日々にはどんな宝物にも勝る価値があった。

“私はそんな成典様を愛していたわ……。成典様も同じ気持ちだと言って下さった時は幸せすぎて罰が当たるんじゃないかと思ったわ”

痛みを堪えるように、ぎゅうっとカップを握りしめる。

私よりも豊姫の方がずっと辛かったに決まっている。

“成典様は結婚を申し出てくれた”

……愛を確かめ合った二人に訪れる結末を、私は既に知っている。