“成典様ったら招かれた宴席を抜け出して屋敷内で迷子になった挙句、親切に帰り道を教えた私に「お前は誰だ!?物の怪か!?」って言ったのよ!!あんなに怒ったのは生まれて初めてだったわ!!”
豊姫は好印象とは言い難い成典との出会いを思い出したのか、顔を膨らませて地団駄を踏んだ。
平安時代のお姫様が親族以外の殿方と話す機会など滅多にない。
困っている人を助けようとなけなしの勇気を出したのに、その結果が物の怪と間違えられるなんて少々悲惨だ。
“後日、丁寧な詫びの文が送られてきたわ。きっと兄から寝たきりの妹がいると聞いたのね。それからよ、成典様がこっそり遊びにくるようになったのは。同情でも嬉しかったな……”
そう言って、初恋に目覚めた少女のように頬を染める。
外の世界からの訪問者に胸を躍らせていた当時の豊姫がありありと目に浮かぶ。
“成典様は色々なことを教えてくれた。立ち寄った市場の話、宮中でのお仕事の話。どれも新鮮で楽しかった。力のことも……こっそり話してくれたわ”
私はごくりと唾を飲みこんだ。
伝説によると成典が力に溺れ、“カグヤ”を蔑ろにしたせいで呪いが生まれたとある。



