今宵も、月と踊る


「豊姫はいつからここにいたの?豊姫は京の都の生まれよね?」

京の都が栄華を極めていたのは遥か昔のことである。豊姫の生きていたであろう時代が終わりを迎えると、権力者たちの醜い諍いを経て、日本の中心は遠く東の都に移り変えられた。

豊姫がいつ東の都に移り住んだのかは分からないが、そのまま京の都にいたとしたら私達は出逢えていなかった。

“それが分からないの。戦ばっかり続くのに飽きて寝ていたら、うっかり寝過ごしちゃったみたいで……。いつの間にかこの屋敷にいたの”

豊姫はテヘヘと恥じた様子で頬を掻いた。

「もう、いい加減なんだから……」

うっかり寝過ごすが百年単位なのは言うまでもない。

橘川家が由緒ある家柄なのは鈴花に聞いた通りだし、この地に居を構えたのは少なくとも年号を幾つか跨いだ昔のことだろう。

もしかしたら、文明開化の前、お侍さんが辺りを闊歩していた時代かもしれない。