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「これでよしっと……」
泥だらけになった軍手を外して、タオルでこめかみに滲んだ汗を拭う。
汚れてもいいようにジャージを着てきて正解だった。長い間手入れされず放置されていた豊姫の寝床の掃除は想像以上の重労働となった。
“綺麗になったわね!!”
「そうね」
豊姫は石碑の周りをグルグルと旋回して、両手を上げて喜んでいた。
地面からの栄養を享受して伸びきった雑草を刈り取り、水垢と苔だらけだった石碑本体をスポンジで磨き上げると、ようやく日参するのに相応しい一角に思えてくる。
普段のデスクワークでは使われない筋肉をほぐすように大きく伸びをする。
石碑の掃除は疲労感の他に、意外な事実の発見をもたらした。
(一体、誰が作ったものなのかしら……)
石碑に刻まれた文字を指でなぞる。
こびりついた水垢を洗い流すとなんと石碑から文字が浮き出てきたのだ。
“この地に眠るカグヤに一生の愛を捧ぐ”
時を経ても色褪せることのないように刻まれた愛の言葉を、私は確かに受け取った。
この文字を刻んだ人は、かつて“カグヤ”を心から愛していたに違いない。



