「どうかな?現に志信だって“カグヤ”を探していたじゃないか。逃がさないように離れに囲ってまで君をこの屋敷に閉じ込める理由が他にあるか?」
……私は答えることが出来なかった。
「真尋は志信の目の前で車に轢かれた。多額の報酬を支払えず、“月天の儀”を行えなかった“顧客”に逆恨みされて殺されそうになったところを真尋がかばったんだ。
身体の傷を治しても真尋は未だに目覚めず、もう2年も眠ったままだ。最後に残された希望は“カグヤ”の持つ橘だけだ」
「嘘……よ……」
志信くんが私を離れに置いていたのは……すべて真尋さんを目覚めさせるためだというの?
じゃあ、キスは?抱擁は?すべて……偽りだというの?
足に力が入らなくてガクガクと震えだす。にわかに床が崩れ落ちてしまったのではないかと思えるほどの眩暈がした。



