……最初に目に飛び込んできたのは、向日葵の大群だった。
鮮やかな黄色。艶やかな赤色。落ち着いた白色に、茶色と赤色のマーブル模様まで。
大きさも種類も様々な向日葵が季節外れだというのに、部屋のそこかしこに生けてある。凛と咲き誇る様子は真夏と寸分違わず、生命力の強さを窺わせた。
私は用心しながら部屋の中に足を踏み入れた。
開けろと言われたので勝手に襖を開けたが、誰かに咎められるのではないかと内心冷や冷やしていたのだ。
ところが、耳を澄ましてみても非難する声は一向に聞こえてこない。
その代わりに、この小さな向日葵畑の中央で誰かがすうすうと寝息を立てていることが分かった。
……童話にある眠り姫そのものだった。
白く透き通るような肌、紅を差した唇、時折ヒクリと動く瞼の動きと合わせるように揺れる長い睫毛。栗色の巻き毛が呼吸をする度に胸の上で踊る。
精巧な人形のように美しい女性は王子の到着をいまや遅しと待っていた。
「彼女が“真尋”……私の妹だ」



