「……ご招待ありがとう」
朧先生にもう一度会うために私が指定できる日は志信くんが“月天の儀”にかかりきりの今夜しかなかった。
門前払いされるのではと危ぶんでいたが“月天の儀”の最中である橘川家に自由に出入りできるほどの重要人物ということが証明されただけだった。
「志信に尋ねてみたのか?」
「いいえ。結局、志信くんには聞けませんでした……。だから代わりにあなたにお尋ねしたいんです」
先日のように怯んではいけない。真実とは何か見極める必要があるのだから。
「真尋というのは誰ですか……?」
“真尋”が誰なのか、朧先生は知っている。彼は知っていてわざと私を炊きつけたのだ。
バカ正直に尋ねる態度を潔いと捉えたのか、朧先生は喉の奥でクツクツと笑った。
「こちらだ。ついてこい」



