「豊……姫……?」
ばっちり目を覚ました私は最後の瞬間に聞いた声の主の名前を呼んだ。
聞き間違えるはずがない。だって、ずっと待っていたんだもの。
私はすぐさま布団から跳ね起きて、離れの至る所を探して回った。トイレ、お風呂場、台所、廊下……。
心当たりをくまなく見て回っていると、ふと窓の外に釘付けになった。
……ひらひらと宙に漂う布地は十二単の色彩に良く似ていた。
「待って!!」
弾かれたように庭に飛び出して後を追いかける。
(豊姫、あなたと話したいことが沢山あるの……)
今思えばいつだって豊姫は私の話を聞くばかりだった。姿を見せなくなって真っ先にそのことを後悔したの。
だから、今度はあなたの話を聞かせてちょうだい?
嬉しかったこと楽しかったこと、苦しかったこと辛かったこと……何だって聞くから。
どうか、一緒に過ごした日々を無意味なもので終わらせないで。



