**********
「38度5分。重症だな」
志信くんは怖い顔で体温計を上下に振って、私の不注意をそれとなく責めた。
「ごめ……」
謝ろうとした途端にケホケホと咳が出て止まらなくなる。志信くんに背中を擦られながら布団の中に戻ると、すぐさま額に濡れたタオルが当てられた。
さすが医者の卵、病人のお世話もお手のものですなあ、と感心している場合ではない。
私が熱にうなされているのを最初に発見したのは一緒に寝ていた志信くんだった。
手足がピクリと動かせないほどの凄まじい倦怠感だった。私は風邪による発熱と発汗で脱水症状を起こしかけていたのだ。
それをいち早く見抜いた志信くんが適切な処置をしてくれなかったら、今頃は病院のベッドで目を覚ますことになっていただろう。
「今日は会社休めよ?」
わざわざ言われなくたって、こんな状態で出勤するなんて無理だ。
「うん……」
布団から上半分だけ顔を出して答えると、またまたケホンと咳が出る。



