「風邪を引くぞ」
いつまで経っても布団に入ってこないことに焦れたのか志信くんが私を回収しにやってきた。見つかる寸でのところで浴衣の袂に名刺を隠す。
背中と膝の裏に手を添えられると、一気に抱き上げられた。同じ目線になったのが嬉しくてつい茶化して尋ねてしまう。
「温めてくれるの?」
「当たり前だろう」
至極当然のように言われてしまえば、小っ恥ずかしいのは私の方だった。
一緒の布団に入ると志信くんは何も言わずにぎゅうっと抱きしめてくれた。
(寒い……)
志信くんの腕の中はとても温かいのに、私の身体はカタカタと小刻み震えていた。志信くんの言う通り風邪を引いたのかもしれない。
……この時の予想は大いに当たり、その夜私は高熱にうなされることになった。



