今宵も、月と踊る


式および披露宴の行われる“月岩神社”は三好屋の近所にあった。

先日と同じように私鉄と地下鉄を乗り継ぐ。呉服店の跡取りに嫁入りする鈴花のお式は当然のことながら神前式だ。

神前式の結婚式に招待されるなんて初めてで少し緊張していた。

(とちらないように気をつけなきゃ……)

駅のホームに続いている下り階段で、危うく転びそうになった時はさすがに肝が冷えた。

裾を少し持ち上げて歩幅を小さくすると歩きやすいそうだが、それも直ぐに忘れてしまいそうになる。慣れってやっぱり重要だ。

歩き方以外にも慣れなければいけないこともある。

それは周りの視線だ。着物を着ているせいか、チラチラと乗客から見られているのだ。

(やっぱり珍しいもんな。着物姿って。でも、見られると恥ずかしいかも……)

羽織っていたショールでさりげなく、身を隠す。

4月初旬はまだまだ肌寒い季節で着物と一緒に借りてきたショールが、意外なところで役に立った。