インターネットで検索すると、小夜の走っている映像は直ぐに手に入った。
「速いな……」
パソコンの小さな画面を食い入るように眺める。
今より引き締まった手足の小夜はうっすらと日に焼けていて、耳まで見えるショートカットだと少年のような幼い印象になった。
トラックを駆け抜ける小夜の速さはひとりだけ群を抜いていた。まるで、背中に羽が生えているようにどんどんと他の選手を引き離していく。
身体は決して大きくはない。女性の中でも平均的な身長しかないはずなのに、小夜の交互の足は驚くほど大きなストライドを描いていた。
もう、こんな風には走れないのだ。
手術から何年も経っているのに未だに残る手術跡が、軽やかにステップを踏む足に重くのしかかる。
失ったものの大きさは計り知れず、得たものは少ない。
(望みがないなんて嘘だろう)
……映像の中でゴールテープを一番に切った小夜は弾けるような笑顔を見せていた。



