今宵も、月と踊る


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鈴花の結婚式当日は綺麗な青空が広がっていた。

数日前まで降り続いていた雨はピタリと止んで、新しい人生の門出を祝福しているかのようである。

私は朝から身支度に大忙しだった。

着付けとヘアメイクのできる美容院を予約したのは良いものの、4月初旬のこの時期は入学式で予約が埋まりつつあったので、ちょうど良い時間が取れなかったのだ。

式は昼過ぎからだというのに、おかげで早朝から美容院に駆け込む羽目になった。

こんなことならお言葉に甘えて、百合子さんに着付けてもらえばよかった。

結婚式の当日に親族にご迷惑をかけるわけにはいかないと、遠慮したのが仇となった。

(着物って着るのも、着せてもらうのも大変なのね……)

グルグルとお腹周りにタオルを巻かれ、着崩れしないように帯をギュッと締められる。

早起きで寝不足の身体には少々刺激が強い。

それでも、鈴花に選んでもらった水色の着物を見ている内に気持ちがしゃきっとしてきた。

着付けが終わる頃には目も冴えてくる。

着物を引き立てるようにされた、切れ長のアイメイクに濃い目のチークとリップ。

いつも手入れに困る腰まで伸びた黒髪は緩く纏められ、小花の髪飾りがあしらわれている。

鏡に映った自分の姿はまずまずの出来だった。