三好屋から家に戻り、離れで小夜の帰りを待つこと2時間あまり。
「ただいま」
仕事を終え帰宅した小夜は疲れた様子で部屋に入ると床にバッグを置いて、いつも着ているモコモコしたルームウェアを押し入れから引っ張り出し始めた。寝る時は浴衣、部屋で寛ぐときはルームウェアと心に決めているらしい。
「おかえり」
俺がむすっと無愛想に返したとしても、さして気にする様子はない。
「今日、三好屋に寄ってきた」
「そうなんだー。鈴花は元気だった?」
「ああ」
別に黙っていたことを怒っているのではない。誕生日を自己申告する必要はないし、悪気があって隠していた訳でもないだろう。答えは実に単純明快。聞かれなかったら答えなかっただけ。オーケー。俺だってそれくらいは分かっている。
「志信くん、申し訳ないんだけど着替えたいから出て行ってもらえるかな?」
それでも、今はモコモコのルームウェアが憎い。
「黙って脱げ」
……繰り返すが俺は断じて怒っていない。



