今宵も、月と踊る


淹れてもらったお茶を飲んで一息入れると、なんと着物選びに女将も混ざった。

「小夜さん、白藤色のような淡い色が気に入ったならこちらもどう?撫子色も小夜さんのシャープな顔立ちに合うと思うわ。描かれている椿もとっても素敵」

鈴花も負けじと張り合ってくる。

「こっちの水色もどうかな。雪輪と流氷の柄にグリーンのぼかしが入っていて、涼やかな印象になると思うの」

二人ともニコニコと笑みを浮かべながら薦めてくる。さすが商売人だ。

(ま、迷う……)

私は薦められた着物を幾つか試着すると散々悩んだ挙句、友人である鈴花の顔を立てて、彼女の選んだ水色の着物を借りることにした。

帯や草履、その他諸々含めて3泊4日でフルセット3万円。

友人価格で少しまけてもらえてよかった。

式の前日までに自宅に郵送してもらえる手続きをして、私は三好屋を後にしたのだった。