今宵も、月と踊る


いっそのことすべてを暴いてしまいたいと思うのは“カグヤ憑き”として性なのか。

時々、おぞましいほどの強い感情が襲い掛かって来て、理性を凌駕しそうになる。

“カグヤ”には“カグヤ憑き”の心が半分宿っているという。

“早く手に入れろ”と何かが胸の奥で騒ぎ出すのは、片割れを探してのことだろう。

だけど、目に見えないものをどうやって手に入れろっていうんだ?

歴代の“カグヤ憑き”が書き残していった日記にも、心を取り戻す術を具体的に記したものはなかった。

一番手っ取り早く試せるのは身体の繋がりを持つことだけれど、無理強いはしたくない。

……小夜は自分からここに残ることを決めてくれた。

怒って出て行かれることを覚悟して壺のことを打ち明けたのに、小夜は怒るどころかここに留まる事を了承してくれた。

それは、奇跡に近い。

(ああ、本当に堪らない……)

起こさないように注意深くその身を抱き寄せて髪を撫でる。ほんのり香る椿の匂いが夢の世界へと誘う。

……“カグヤ”がいる。

俺は今日も人知れず、彼女の存在を確かめるのだった。